最初の一枚を描いて、思っていたのと違う線にがっかりする。弾いてみたフレーズがつっかえて、録音を聞き返す前に消してしまう。買ったばかりのノートに最初の数行を書いて、字も内容も気に入らなくて閉じる。気づけば「やる前から、うまくできない自分が見えてしまって手が止まる」。そんなふうに、楽しむより先に「出来栄え」が気になって、趣味がしんどくなっていませんか。

うまくできないと嫌になってやめてしまう。これは、あなただけに起きていることではありません。むしろ、ものごとにきちんと向き合える人ほど起きやすいことです。

それは、あなたの根気のなさではありません

先に伝えておきたいことがあります。下手だと感じて続かなくなるのは、あなたの根気や才能が足りないからではありません。

完璧主義の人は、「やるなら、ちゃんとできていたい」という基準を最初から高く持っています。これはだらしなさの正反対で、むしろ丁寧さや責任感の表れです。ただ、その高い基準を「始めたばかりの今日の自分」に当ててしまうと、何をやっても「まだ足りない」になってしまう。だから楽しくなる前に、苦しくなってやめてしまうのです。

これは性格を直すべき欠点ではなく、続け方の設計の問題です。設計の問題なら、自分を責めなくても、仕組みのほうを変えればいい。なぜ続かないのが意志ではなく設計の話なのかは、続かないのは根性ではなく設計の問題でも掘り下げています。

なぜ「下手だと嫌になる」のかを分解する

「完璧主義だから」で片づけてしまうと、手の打ちようがありません。少し分けて眺めてみましょう。自分がどれに当てはまるか、ながめるだけでかまいません。

1. 始めたばかりの自分に、完成形を求めている

頭の中には、お手本にしたい作品や、上手な人のイメージがあります。完璧主義の人ほど、その理想がくっきりしている。すると、今日の不格好な一回が、いつも理想と比べられて「ダメな出来」に見えてしまいます。

でも、どんなに上手な人にも下手だった最初の一回があります。今のあなたは、その人の「最初の一回」と同じ地点に立っているだけ。比べる相手を間違えると、永遠に足りないままになります。

2. 「見られる」ことを前提に作ってしまう

SNSに上げたら、人に見せたら、と思った瞬間、頭の中に他人の採点者が住みつきます。まだ誰も見ていないのに、「これでは恥ずかしい」と先回りして手が止まる。

評価を気にするのは自然なことです。ただ、評価の不安は、楽しむための余白をまるごと食べてしまいます。本当はただ自分のために触れたかっただけなのに、いつの間にか「人前に出せる出来かどうか」が基準になっている。これでは始める前から重くなります。

3. 失敗を「やめる理由」にしてしまう

うまくいかなかった日に、「やっぱり向いていない」と結論を出していませんか。完璧主義の人は、ひとつのつまずきを「全体の失敗」として受け取りやすい傾向があります。

でも、下手な回は失敗ではなく、ただの通過点です。一回のうまくいかなさで永久にさよならする必要はありません。失敗が「やめる理由」になっている限り、どんな趣味も長くは続きません。

「上達」ではなく「また触れること」を軸にする

ここから、力の抜き方の話です。完璧主義をゆるめるいちばんのコツは、軸を「うまくできること」から「また気軽に触れられること」へ置き換えることです。

うまくできることをゴールにすると、出来の悪い回はすべて失敗になります。でも、また触れられることをゴールにすれば、下手でも、途中でやめても、触れた時点で成功です。出来栄えは評価の対象ではなく、ただの記録になります。

そしてもうひとつ大事なのが、最初は「誰にも見せない」と決めてしまうこと。発表しない、投稿しない、人に報告しない。見せない前提にするだけで、頭の中の採点者がいなくなり、下手なまま気楽に手を動かせます。見せるかどうかは、ずっと先で、楽しくなってから考えれば十分です。

楽しいはずの趣味がいつの間にかノルマや義務に感じる人は、趣味が義務みたいになって続かないときの手放し方もあわせてどうぞ。完璧主義とは別の角度から、肩の力の抜き方に触れています。

今日できる、下手のままやる1分の一歩

大きな決意はいりません。今日、家にあるもので、1分でできることから始めてみてください。全部やる必要はなく、ピンときたひとつで大丈夫です。

  • 紙とペンで、わざと「30秒だけ」「雑に」何かを描く・書く。上手にやろうとしないのが目的です
  • スマホのメモに、思いついたことをそのまま一行だけ残す。読み返さない、直さない
  • 口ずさむ、リズムを取る、ストレッチを一回——形にならなくていい動きを1分だけやる
  • 出来上がったものを「消さずに、見せずに、そのまま置いておく」と決める

ポイントは、上手にやることではなく、**「下手なまま終わらせる練習」**をすることです。完璧主義のしんどさは、できない自分を採点する回路から生まれます。その回路に「採点しない時間」を一回入れるだけで、ずいぶん呼吸が楽になります。

続けやすくする、ちょっとした工夫

一回できたら、続けやすくする仕掛けをゆるく足してみましょう。

  • 完成させない。途中でやめてOK。むしろ物足りないくらいで切り上げると、次にまた触れたくなります
  • 量も時間も決めない。「1日30分」のようなルールは、できなかった日の減点になりがちです。できた日だけ数える、くらいでちょうどいい
  • 作ったものを評価しない場所に置く。捨てない、直さない、見返さない専用の箱やフォルダを作ると、出来栄えから距離が取れます
  • 下手な回を笑って記録する。「今日もひどい出来だった」とメモするだけで、失敗が観察に変わります

これらはすべて、上達のためではなく「また戻ってこられる」ための工夫です。途切れても、戻った時点で続いています。

道具は、楽しくなってからでいい

完璧主義の人は、形から入りがちです。いい道具をそろえれば、ちゃんとできる気がする。でも高い道具は「もったいないから続けなきゃ」という新しいプレッシャーになり、かえって重くなることがあります。

だから順番を逆にしましょう。まずは家にあるもの、お金のかからない形で、下手なまま試す。紙とペン、スマホ、ある材料での簡単なひと工夫で十分です。何度も戻ってきて、楽しいと感じられてから、必要なら少しだけ道具を足す。道具は「ご褒美」くらいの位置で後からついてきます。


下手だと嫌になってしまうのは、あなたが手を抜けない人で、楽しもうと真剣だった証でもあります。だからこそ今度は、「ちゃんとできていたい」を少しだけ横に置いて、下手なまま・見せない前提で、気楽に戻ってこられる設計に組み替えてみてください。

自分がどんな関わり方なら肩の力を抜いて続けられそうか、傾向を知りたくなったら、TinyTrailの無料診断(16タイプ・登録不要)を試してみてください。点数で優劣をつけたり、何かを売り込んだりはしません。下手でも、また戻ってきても歓迎です。気負わず、お茶でも飲みながらどうぞ。